「夫(妻)の不倫相手に、慰謝料だけでなく、証拠を掴むためにかかった探偵の調査費用も請求したい!」
パートナーの裏切りによって大きな精神的苦痛を受けたうえに、真実を明らかにするために数十万円、時には百万円を超える探偵費用まで負担するのは、到底納得できるものではありませんよね。
結論から申し上げますと、探偵の調査費用は、一定の条件下で相手(不法行為者)に請求できる可能性があります。
しかし、必ずしも全額が認められるわけではなく、裁判では一部のみの認容、あるいは全く認められないケースも少なくありません。
この記事では、どのような場合に探偵の調査費用を相手に請求できるのか、その法的根拠や重要な判例、そして請求を成功させるための具体的なステップと5つのポイントを解説します。
目次
探偵費用を相手に請求できる法的根拠は「不法行為」

そもそも、なぜ探偵の調査費用を不倫相手に請求できるのでしょうか。その根拠は、民法709条の「不法行為による損害賠償請求」にあります。
(不法行為による損害賠償) 第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。とあります。
不倫(不貞行為)は、夫婦間の平和な生活を送る権利を侵害する「不法行為」にあたります。そして、不法行為を行った者(不倫相手)は、それによって生じた「損害」を賠償する責任を負います。
この「損害」の中に、探偵の調査費用が含まれるかどうかが最大の争点となります。
裁判所が調査費用を損害の一部として認めるためには、不法行為(不貞行為)と調査費用の間に「相当因果関係」 があると判断される必要があります。
簡単に言えば、「その不貞行為がなければ、探偵に調査を依頼する必要はなかった」、かつ「不貞行為の証拠を得るために、探偵への依頼が社会通念上、必要かつ相当な手段であった」と認められることが重要です。
【判例で見る】調査費用の請求が認められるケース・認められないケース

実際に、裁判ではどのように判断されているのでしょうか。過去の判例を見ていくと、調査費用の請求が認められるかどうかの傾向が見えてきます。
請求が認められやすいケース
一般的に、以下のような状況では調査の必要性が高いと判断され、費用の一部または全額が損害として認められやすい傾向にあります。
- 相手が不貞行為を頑なに否定している場合
- 巧妙に不貞の事実を隠しており、自力での証拠収集が極めて困難な場合
- 調査内容が不貞行為の立証に直接的かつ不可欠であった場合
- 調査期間や費用が、事案に対して社会通念上、妥当な範囲である場合
【参考判例①】調査費用(27万1101円)の全額が認められたケース(東京地裁令和2年12月17日判決)
この事案では、妻が夫の不貞を疑い探偵に調査を依頼し、その結果、不貞行為の事実が判明しました。裁判所は、調査の必要性を認め、調査が1日のみで費用も不相当に高額とはいえないとして、調査費用の全額を損害として認めました。
【参考判例②】調査費用(77万7600円)の全額が認められたケース(東京地裁平成28年11月30日判決)
このケースでは夫の行動から妻は不貞を疑ったが、夫は不貞を否定して妻はやむなく興信所に調査を依頼しています。調査は2日間にわたって行われましたが、費用も不相当に高額ではないと判断され、全額が損害として認められています。
請求が認められにくい・減額されるケース
一方で、次のようなケースでは、調査の必要性や相当性が低いと判断され、請求が棄却されたり、大幅に減額されたりする可能性が高くなります。
- 探偵に依頼する前に、すでに証拠があった場合(例:メールや写真など)
- 相手が当初から不貞行為の事実を認めていた場合
- 調査方法に特段専門性がない場合
- 調査期間が不必要に長い、調査費用が社会通念上あまりに高額であるなど、調査が過剰であったと判断された場合
- 調査によって、不貞行為の証拠が得られなかった場合
【参考判例③】調査費用(約46万円)のうち10万円のみ認められたケース(東京地裁令和3年2月24日判決)
配偶者や不倫相手が素直に不倫を認めるか疑問があるとして、調査会社への依頼の必要性は認められました。しかし、裁判所は不法行為との相当因果関係を認めたのは、かかった費用のうち10万円のみでした。
【参考判例④】調査費用が損害と認められなかったケース(東京高裁令和6年1月17日判決)
近年の注目すべき判例として、探偵費用は「不貞行為により通常生ずべき損害とは認められない」として、損害賠償の対象外とする判断も出ています。これは、証拠収集の費用は原則として訴訟を起こす側が負担すべきという考え方に基づくもので、今後の裁判の動向に影響を与える可能性があります。
これらの判例からわかるように、「探偵に頼らざるを得なかった」という切迫した状況を具体的に主張・立証できるかどうかが、請求認容の鍵となります。
相手に調査費用を請求するための具体的な4ステップ

では、実際に探偵の調査費用を相手に請求するには、どうすればよいのでしょうか。一般的な流れは以下の4つのステップになります。
Step1:必要書類をすべて保管する
まず、請求の根拠となる書類を確実に揃えましょう。これらがなければ、そもそも請求自体が困難になります。
- 探偵との契約書
- 調査報告書(写真や動画などの証拠含む)
- 調査費用の領収書・請求書
Step2:内容証明郵便で慰謝料と合わせて請求する
多くの場合、不倫相手への請求は、まず弁護士を通じて内容証明郵便を送付することから始まります。慰謝料の請求額に、損害の一部として調査費用を上乗せする形で記載します。
内容証明郵便は、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスで、相手方に心理的なプレッシャーを与え、交渉を有利に進める効果が期待できます。
Step3:交渉(示談)で合意を目指す
内容証明郵便が相手方に届けば、次は当事者間での交渉(示談)が始まります。裁判外での話し合いのため、双方が合意すれば、調査費用をいくら支払うかを自由に決めることができます。
判例では全額認容が難しい場合でも、交渉次第では、相手が早期解決を望んで全額支払いに応じる可能性もあります。合意した内容は、後日のトラブルを防ぐために必ず示談書として書面に残しましょう。
Step4:交渉が決裂すれば裁判(訴訟)へ
交渉がまとまらない場合は、地方裁判所に慰謝料請求訴訟を提起することになります。
この訴訟の中で、慰謝料と共に、調査費用も損害賠償の一部として請求します。
裁判では、前述した「調査の必要性・相当性」が厳しく問われます。請求が認められない可能性もあるという事はしっかり認識しつつ、弁護士と綿密に打ち合わせを行い、説得力のある主張と立証を行う必要があります。
請求成功の確率を上げる!知っておくべき5つの重要ポイント
探偵の調査費用を1円でも多く相手に支払ってもらうためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
「調査の必要性」を具体的に主張する
なぜ、自分で証拠を集められず、探偵に依頼する必要があったのかを明確にしましょう。「相手が嘘をつき話し合いにも応じなかったため、客観的な証拠が必要不可欠だった」「子供が小さくて夜中の調査を自分で行う事は不可能であった」など、具体的な事情を主張することが重要です。
過剰な調査は避ける
調査の必要性が認められても、その内容や費用が「相当」でなければ、全額の請求は認められません。例えば、1回の調査で十分な証拠が得られたにもかかわらず、何ヶ月も調査を続けるのは過剰と判断される可能性があります。信頼できる探偵事務所は、裁判で通用する証拠を得るために必要最低限の調査プランを提案してくれます。
複数の探偵事務所から見積もりを取る
複数の探偵事務所から見積もりを取っておくことで、依頼した調査費用が一般的な相場からかけ離れていない、つまり「妥当な金額」であることを客観的に示す材料になり得ます。
関連記事:浮気の調査料金いくらかかる?探偵の調査プランについても解説
迷わず弁護士に相談・依頼する
最も重要なポイントです。調査費用の請求は、法的な知識と交渉術が不可欠です。弁護士に依頼すれば、法的な根拠に基づいた的確な主張が可能になり、交渉から訴訟まで一貫して代理人として活動してくれます。これにより、ご自身の精神的・時間的負担が大幅に軽減されるだけでなく、請求が認められる可能性も格段に高まります。
高度な調査、裁判で使える報告書を作成する探偵を選ぶ
自分でもできるような調査であれば当然探偵の浮気調査の必要性が認められません。探偵事務所を選ぶ段階も非常に重要です。契約前に、「高い調査技術があるか」「裁判で使用できるレベルの調査報告書を作成してくれるか」を必ず確認しましょう。証拠としての価値が低い報告書では、慰謝料請求自体が難しくなり、調査費用の請求も当然認められづらくなります。
FAQ(よくある質問)
| 弁護士費用も相手に請求できますか? |
| 訴訟になった場合、判決で認められた損害額の1割程度が弁護士費用として認められることがあります。ただし、これも調査費用と同様、必ず認められるわけではありません。 |
| 浮気した配偶者にも調査費用を請求できますか? |
| はい、不貞行為は配偶者と浮気相手の「共同不法行為」なので、どちらにも請求することが可能です。通常は資力のある方に請求することが多いです。 |
まとめ
探偵の調査費用を不倫相手に請求することは、法的に可能なケースもあります。しかし、そのためには「不貞行為と調査費用の相当因果関係」、つまり「その調査が本当に必要不可欠だったのか」を裁判所に認めてもらう必要があります。
近年の判例では、調査費用の請求に厳しい判断が下される傾向も見られますが、事案によっては全額請求が認められているケースも存在します。
高額な調査費用を泣き寝入りしないためには、
- 裁判で通用する質の高い証拠を確保
- 調査の必要性・相当性を法的にきちんと主張すること
が不可欠です。
そして、そのための最も確実で賢明な選択は、男女問題に強い弁護士に相談することです。法律の専門家である弁護士は、あなたの状況を的確に分析し、調査費用の請求を含めた慰謝料請求全体を最も有利な形で進めるための道筋を示してくれます。
あなたの持っている証拠で十分か、探偵の調査を行う必要があるか、調査費用も請求できるかなども相談すると良いでしょう。
探偵の調査費用の請求は必ずしも認められるわけではありません。いくら費用がかかるかしっかり見積もりを出してもらい計画的に調査を行うようにしてください。
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