「採用候補者の経歴がどうも怪しい」 「経理や財務など、金銭を扱う重要なポストに就ける予定だが、過去に金融トラブルがないか心配だ」
企業の採用担当者や経営者の方から、私たち探偵事務所へこのような相談を受けることが急増しています。
長引く不景気や物価高の影響もあり、自己破産や民事再生などの債務整理歴を持つ求職者は、皆様が想像している以上に存在します。
しかし、面接で「あなたは過去に自己破産していますか?」と直球で聞くことは、差別や人権配慮の観点から難しく、仮に聞いたとしても本人が正直に答える保証はどこにもありません。
そこで多くの企業がリスクヘッジとして思いつくのが「官報の検索」です。
かつては比較的容易だったこの「官報検索」ですが、現在はシステムや制度の変更により、一般の方が特定の人物を調査するのは「干し草の中から針を探す」ほど困難を極める作業となっています。
本記事では、元刑事である筆者の視点から、「破産者を採用する具体的なリスク」、「自分で行う官報検索の限界と実情」、そして企業を守るための「確実な調査方法」について、徹底解説します。
目次
企業が知っておくべき「破産者を採用するリスク」
そもそも、なぜ採用時に破産歴を確認する必要があるのでしょうか。 「過去の失敗は誰にでもある、再チャレンジを応援したい」という経営者の考え方は非常に尊いものです。
しかし、それはあくまで「リスクを知った上で判断する」場合の話です。 企業防衛の観点からは、看過できない重大なリスクが3つ存在します。
金銭トラブルと「業務上横領」の予兆
元刑事として多くの経済事犯を見てきましたが、最も懸念されるのは金銭感覚の問題です。 自己破産に至る経緯は様々ですが、中にはギャンブル依存、過度な浪費癖、あるいは身の丈に合わない生活水準の維持が原因であるケースが一定数含まれます。
破産手続きによって借金がリセットされたとしても、「金銭に対するルーズな思考」や「生活習慣」まではリセットされません。
金銭的な余裕がない従業員が、目の前にある会社の現金、備品、あるいは顧客からの預かり金に手を付けてしまう――。こうした「業務上横領」のリスクは、統計的にも決して無視できないものです。
特に経理担当、店舗責任者、営業職など、現金を直接扱う職種においては致命的な問題となり得ます。
資格制限(欠格事由)による法令違反
特定の職業においては、破産手続開始の決定を受けてから「復権(免責許可の決定が確定すること)」を得るまでの間、その業務に就くことが法律で禁止されています。これを「欠格事由」と呼びます。
【主な欠格事由に該当する職種・資格】
- 警備員(警備業法)
- 生命保険募集人(保険業法)
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 弁護士、司法書士、税理士、公認会計士などの士業
- 質屋営業者、古物商
- 会社の取締役(会社法上の委任契約終了事由となる場合がある)
もし、企業側がこれを知らずに破産者を採用・配置してしまった場合、明確な業法違反となります。 最悪の場合、営業停止処分や許認可の取り消しなど、企業全体が行政処分を受ける可能性があります。「知らなかった」では済まされない、コンプライアンス上の巨大な落とし穴です。
業務パフォーマンス低下と職場環境への悪影響
破産手続き中、あるいは破産後も隠し借金(ヤミ金など)がある場合、債権者からの執拗な取り立てや、経済的な不安からくる精神的ストレスにより、業務への集中力が著しく低下することがあります。
また、実務上の負担も見逃せません。
自己破産が通れば、ほとんどの借金が免責(払わずに済む)されます。しかし、破産したとしても免責されない債権(養育費など)もあります。
もし、債権者が裁判所を通じて「給与差押命令」を出した場合、その通知は会社(雇用主)に届きます。 経理担当者は、給与の一部を計算して債権者へ直接支払うという特殊な処理に追われることになります。また、会社側が誤って全額を本人に支払ってしまった場合、会社が債権者に対しても支払義務を負う(二重払い)リスクさえあるのです。
ネットで検索?官報検索に潜む「大きな落とし穴」
「破産すれば必ず『官報』に載るのだから、ネットで名前を検索すればすぐに分かるだろう」 そう考えている採用担当者様も多いことでしょう。
しかし、その認識は現在の仕様においては半分以上間違いと言わざるを得ません。
そもそも「官報」とは何か?
官報とは、国が発行する唯一の機関紙です。法律や政令の公布、そして自己破産や民事再生、相続人捜索などの裁判所公告が掲載されます。行政機関の休日を除き、毎日発行されています。 ここに掲載される情報は「公知の事実」となるため、誰でも閲覧すること自体は可能です。
【重要】「氏名・住所」でのピンポイント検索ができなくなった
以前の「インターネット官報情報検索サービス」では、氏名や住所を入力するだけで、該当する記事をピンポイントで探し出すことが容易でした。
しかし、個人情報保護の観点の高まりや、「破産者マップ」等が社会問題化したことを受け、システムや規約の改定が進みました。
現在、無料で閲覧できる「インターネット版官報」や、多くの検索サービスにおいて、「破産者の氏名や住所」を直接キーワードにして検索し、個人を特定してヒットさせる機能は制限、あるいは廃止されているケースが一般的です。
現在可能な検索の多くは、「日付」を指定してその日の官報を開くか、記事内の一般的なキーワード(「破産」「開始」など)で絞り込む程度に限られています。
「干し草の中から針を探す」官報調査の実態
官報は毎日発行され、1回の発行で数十〜数百件、多い時期にはそれ以上の破産者情報が掲載されます。紙面(PDF)には、全国の破産者の住所と氏名が、極めて小さな文字で延々と羅列されています。
もし、あなたが調査したい対象者が「いつ」自己破産したか、その正確な日付(X年X月X日)を知らない場合、どうなるでしょうか?
あなたは、過去5年分、あるいは10年分の官報(数千日分)のデータを1日分ずつ開き、PDFの細かい文字を目視で追い、何万人というリストの中から、たった1人の応募者の名前を探し出さなければなりません。
氏名で検索できない以上、この膨大なデータの中から特定の1名を見つけ出す作業は、比喩ではなく「広大な干し草の山の中から、1本の針を探し出す」ようなものです。 通常業務を抱える採用担当者が、ここまでの時間と労力を割くことは物理的に不可能です。
結果として、「直近1ヶ月分だけ見たが載っていなかったからヨシとする」という不完全な調査で採用を決定し、入社後に問題が発覚するケースが後を絶ちません。これでは、調査をした意味が全くないのです。
まだある!素人の自社調査が失敗する「2つの抜け穴」
仮に、貴社の担当者が膨大な時間をかけて、過去の官報を目視チェックしたとしましょう。それでも、一般の方による調査では見抜けない「抜け穴」が存在します。
元刑事が現場で培った「人を見る目」から言えば、経歴を隠そうとする人物は、以下のような手段を使っている可能性があります。
氏名の変更(結婚・離婚・養子縁組)
官報に掲載されるのは、あくまで「破産手続決定時の氏名」です。 例えば、破産後に結婚して苗字が変われば、現在の履歴書の氏名でいくら探してもヒットしません。これは女性に限らず、男性が婿養子に入るケースも同様です。
さらに悪質なケースでは、「過去の破産歴を隠すため」に、意図的に養子縁組を行って姓を変える人物も存在します。
また、離婚しても旧姓に戻さず婚姻時の姓を名乗り続ける場合など、氏名の変遷は複雑です。 「今の名前」しか知らない採用担当者が、過去の「別の名前」での破産事実を見つけることは不可能に近いです。
住所の変更と「同姓同名」の壁
官報には「破産申立時の住所」が記載されます。しかし、破産後に転居している場合、現在の履歴書の住所と官報の住所は一致しません。 日本には同姓同名の人物が五万といます。 「名前は一致するが、住所が違う。年齢も書かれていない。果たしてこれは本人なのか、別人なのか?」 この判断がつかず、「怪しいが確証が持てない」という状態で調査が行き詰まるのが関の山です。
確実な「シロ・クロ」判定はプロの探偵へ
採用リスクを回避し、企業の資産と信用を守るためには、中途半端な自社調査はかえって危険です。「調べたつもり」になって安心してしまうのが一番のリスクだからです。
ここでこそ、調査のプロである探偵事務所、特に元刑事が在籍するような実務経験豊富な調査機関の出番となります。
なぜ探偵に依頼すべきなのか。その強みは「データの質」と「裏取りの技術」にあります。
独自のデータベースと検索ノウハウ
我々プロの探偵は、過去数十年にわたる官報データを蓄積した独自のデータベースや、特殊な検索ノウハウを持っています。
一般の検索サービスでは不可能な「クロスリファレンス(氏名、生年月日、旧住所、旧姓などの複合検索)」を行い、膨大なデータの中から対象者を絞り込むことが可能です。 一般の方が数週間かけても見つけられない情報を、我々は迅速かつ正確に抽出します。
元刑事ならではの「裏取り」技術
単に「データ上の有無」を確認するだけではありません。
- 対象者が履歴書に記載していない「空白の期間」に何をしていたのか?
- 前職での退職理由は本当に「一身上の都合」なのか?(解雇やトラブル隠しではないか)
- 近隣での風評や、金銭トラブルの噂はなかったか?
元刑事ならではの「聞き込み」「張り込み」「行動調査」などのスキルを組み合わせることで、書面だけでは決して見えてこない「生身の人物像」を浮き彫りにします。
これにより、 「破産はしていないが、ギャンブル借金で首が回らない状態」といった、官報以前のリスクも見抜くことができます。
法的リスクの回避と適正な報告
採用調査(バックグラウンドチェック)は、職業安定法や個人情報保護法、人権に関わる様々な法令を遵守して行う必要があります。 差別につながる不適切な調査は、逆に企業側のリスクとなります。我々はプロとして適法な範囲内で、採用判断に必要な客観的事実のみを収集し、報告します。
おわりに
1人の社員を採用し、定年まで雇用する場合、企業が支払う生涯賃金は数千、数億にのぼると言われています。 採用とは、それだけ巨額の「投資活動」なのです。
その投資対象が、実は重大な金銭リスクや虚偽の経歴を抱えていたとしたら…。
調査費用を惜しんだばかりに、将来的に数千万円の横領被害に遭ったり、会社の社会的信用が失墜したりしては、元も子もありません。
また、問題社員を解雇するための労務コストは、採用コストの比ではありません。
もし、採用予定者の経歴に少しでも違和感や不安を感じたり、経理・役員などの重要なポジションへの登用を考えていたりする場合は、一度総合探偵事務所アルシュへご相談ください。
元刑事としての経験と、探偵としての確かな調査力を駆使し、貴社の安全な採用活動を全力でサポートいたします。
総合探偵事務所アルシュ船橋へのお問い合わせはコチラから。


















