身辺調査があるのは警察だけ?身辺調査が行われる職業や仕事とは?

企業を経営し、組織を率いる経営者や採用担当者にとって、「人の見極め」は永遠の課題です。履歴書や数回の面接だけで、その人物の本当の姿や隠された過去を見抜くことは容易ではありません。ひとたび問題のある人物を重要なポジションに就けてしまえば、企業の信用失墜や多額の損害に直結するリスクがあります。

こうした採用や人事異動におけるリスクを未然に防ぐ手段として注目されているのが「身辺調査」です。

「身辺調査」と聞くと、「警察官になる時に行われる特別なもの」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実際のビジネスの現場では、警察以外の多くの職業で身辺調査が日常的に行われています。

本記事では、元刑事の視点を持つ探偵事務所が、身辺調査の基本から、「身辺調査=警察」というイメージの理由、そして実際にどのような業界で探偵への依頼が行われているのかを詳しく解説します。

身辺調査とは?企業のリスクを未然に防ぐ防波堤

身辺調査(バックグラウンドチェック)とは、対象者の経歴、素行、過去のトラブル、経済状況、反社会的勢力との関わりなどを客観的に調査し、その人物の信頼性や安全性を確認する調査のことです。

企業が行う身辺調査の主な目的は以下の通りです。

  • 経歴詐称の発見: 学歴や職歴に嘘がないか、不自然な空白期間がないかを確認する。
  • 金銭トラブルの有無: 過去の破産歴や多額の借金など、金銭的なリスクを抱えていないかを確認する。
  • 素行・人間性の確認: 前職でのハラスメント行為や無断欠勤、SNSでの不適切な発言などがないかを調べる。
  • 反社会的勢力との排除(コンプライアンス遵守): 暴力団や反社会的勢力との関わりがないかを徹底して確認する。

採用活動において、応募者は自分を良く見せようとするものです。企業側が自衛するためには、申告された情報だけを鵜呑みにするのではなく、第三者の目で裏付けを取ることが重要になります。

「身辺調査=警察」のイメージが強い理由と実態

Googleなどの検索エンジンで「身辺調査」と入力すると、「身辺調査 警察」というキーワードが上位に表示されます。これは、多くの人が「警察官の採用試験では厳しい身辺調査がある」と認識しているためです。

なぜ警察官の身辺調査は厳しいのか?

警察官は、国家の治安を維持し、国民の生命や財産を守るという極めて重要な責務を負っています。また、捜査情報という高度な機密情報に触れ、拳銃の所持や逮捕権といった強大な権力を行使する立場です。

もし、警察官自身やその親族に反社会的勢力とのつながりがあったり、重大な犯罪歴があったりすれば、組織の腐敗や情報漏洩につながり、社会の根幹が揺らいでしまいます。

そのため、警察組織では採用時に、本人だけでなく親族関係に至るまで厳格な身辺調査を行うことが知られています。これは組織の性質上、不可欠なリスク管理と言えます。

警察だけじゃない!身辺調査が実施されやすい業界

「身辺調査は警察などの公的機関だけのもの」というのは大きな誤解です。民間企業であっても、業務の性質上、高い倫理観や信用が求められる職業では、採用時に身辺調査が実施されています。身辺調査が行われやすい職業として代表的なものをいくつかご紹介します。

金融・証券業界

銀行、証券会社、保険会社など、顧客の多額の資産を直接扱う金融業界では、古くから厳格な身辺調査(バックグラウンドチェック)が行われています。横領などの金融犯罪を防ぐため、応募者自身に過去の金銭トラブルがないかなどが厳しくチェックされます。

警備業界(警備員)

他人の生命、身体、財産を守る警備員も身辺調査が必須の職業です。そもそも「警備業法」という法律により、破産して復権を得ない者や、過去に特定の犯罪歴がある者、暴力団関係者などは警備員になることができないと明確に定められています。そのため、警備会社は採用時に身元確認を行います。

IT業界(システムエンジニア・インフラ担当)

近年、急激に身辺調査の需要が高まっているのがIT業界です。企業の顧客データや国家のインフラシステムにアクセスできる権限を持つエンジニアが、情報を持ち出したり、故意にシステムをダウンさせたりする「内部不正」のリスクが高まっているためです。

教育・保育業界

子供の命や安全を預かる保育士や教員、学習塾の講師なども、過去の犯罪歴(特に性犯罪など)や素行不良がないかが厳しく問われるようになっています。近年では国を挙げて「日本版DBS(教育・保育施設等における就業者の犯歴照会システム)」の創設が議論されるなど、業界全体で身辺調査の重要性が認識されています。

探偵への依頼が増加!身辺調査が必要な「仕事・重要ポスト」とは?

ここまでは一般的な職業について触れましたが、企業の経営者や人事担当者が「自社の特定の人物」に対して、我々のような探偵事務所に身辺調査を依頼するケースが多々あります。

一般的な社員全員に対して探偵を入れることはコスト的に現実的ではありませんが、企業の命運を左右する「重要ポストへの配属・中途採用」においては、徹底した調査が求められます。

具体的に探偵へ依頼のある仕事やポジションを解説します。

取締役・執行役員などの「経営幹部」

外部から経営幹部(CXOクラス)をヘッドハンティングで招き入れる際、身辺調査は必須と言えます。経営陣に反社会的勢力とのつながりがあったり、過去に他社でセクハラ・パワハラによる退職勧奨を受けていたりした事実が発覚すれば、企業の株価暴落やブランドの致命的な失墜につながります。経営陣の選定においては、経歴詐称だけでなく「見えない素行」の確認が不可欠です。

財務・経理の「最高責任者(CFO等)」

会社の「財布の紐」を握る財務・経理のトップには、絶対的な清廉性が求められます。過去に不正会計に関与していないか、個人的なギャンブル依存や多重債務を抱えていないかなど、経営者以上に厳しい目でのチェックが必要です。

M&A(企業の合併・買収)の責任者や対象企業の経営者

巨額の資金が動くM&Aにおいては、買収先の企業の財務状況を調べるデューデリジェンスだけでなく、「相手先企業の経営者」や「自社のM&A責任者」の身辺調査が行われることが多くあります。裏で不当なキックバック(リベート)を受け取っていないか、競合他社に情報を横流ししていないかなどを調査します。

新規事業や海外拠点の立ち上げ責任者

本社からの監視の目が届きにくいポジションを任せる人物には、高い独立性と信用が必要です。横領や現地での不適切な交友関係を防ぐため、赴任前や登用前に調査を実施するケースが増えています。

【比較】人事部の調査と探偵の調査の違い

調査方法 調査の深さ・内容 メリット デメリット・限界
企業(人事部)による調査 浅い(履歴書の確認、リファレンスチェック、WEB検索など) コストが低く、手軽に実施できる。 巧妙な経歴詐称や、表に出ない私生活のトラブル(借金・素行不良)は見抜きにくい。
探偵・専門機関の身辺調査 深い(現地調査、聞き込み、反社チェック、行動調査など) 隠されたリスクを客観的かつ高精度に発見できる。 費用がかかる。適法な調査を行うため、専門性の高い業者選びが必要。

身辺調査を行う際の注意点

企業防衛のために身辺調査は極めて有効ですが、実施にあたっては法律(特に個人情報保護法や職業安定法)を遵守する必要があります。

本人の同意取得

原則として、採用選考において身辺調査(バックグラウンドチェック)を行う場合は、事前に応募者本人から書面等で同意を得る必要があります。

就職差別の禁止:

厚生労働省が定める指針により、「出生地・本籍地」「家族の職業」「宗教・思想・支持政党」など、本人の能力や適性に関係のない事柄を調査し、それを理由に採否を決定することは「就職差別」にあたり厳しく禁じられています。

違法な調査を行わない探偵を選ぶ

前述の差別につながる調査や、不正な手段(戸籍の不正取得など)で情報を集めるような悪質な探偵事務所に依頼してしまうと、依頼した企業側も法的責任を問われる恐れがあります。

元刑事などの警察OBが在籍する探偵事務所は、法律の限界や「どこまでが適法な調査か」を熟知しているため、コンプライアンスを重視する企業様からの依頼先として適しています。

まとめ

「身辺調査があるのは警察だけ」というのは過去の常識です。現代のビジネス環境において、身辺調査は企業と既存の社員を守るための「正当な防衛策」となっています。

特に、企業の重要ポストを担う人材の採用や登用において、「面接での印象が良かったから」「有名な企業にいたから」という理由だけで決断を下すのはハイリスクです。

万が一のトラブルが発生してから対処するコストに比べれば、事前の調査にかかる費用は極めて安価な「保険」と言えるでしょう。

自社に重大な損害をもたらす人物を水際で防ぐためにも、経営者や採用担当者の皆様は、正しい知識に基づき、信頼できる専門機関を活用した身辺調査の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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