「社員個人の不倫はプライベートな問題であり、会社が関与すべきではない」。多くの経営者や人事担当者は、そう考えているかもしれません。しかし、その認識は、時に企業のコンプライアンスリスク、法的リスク、そして経営リスクを著しく高めることにつながります。
社内不倫を放置することは、単なる倫理的な問題ではなく、職場環境の悪化、情報漏洩、ハラスメント、生産性の低下など、企業経営に直結する様々なリスクの温床となり得るからです。
本記事では、社内不倫が企業にもたらす具体的な危険性と、企業が介入すべき事案の具体的な例、そして「解雇」を含めた適切な対応ステップを、法的な視点も交えて徹底解説します。「社内不倫」というデリケートな問題に、企業としてどう向き合い、どうリスクを回避すべきか、その具体的な道筋を示します。
目次
社内不倫を「放置」した場合に企業が被る5大リスク

社内不倫は、当事者二人の問題で終わらないケースがあります。企業が介入せずに「放置」することで、以下のような深刻なリスクに発展する可能性があることを知っておきましょう。
1.職場環境の悪化と生産性の低下
不倫の事実が社内で広まると、ゴシップの対象となり、職場内の信頼関係が崩壊します。当事者が同じ部署やチームにいる場合、業務上の連携に支障をきたし、周囲の従業員にも精神的なストレスを与え、全体の生産性が著しく低下することがあります。
2.ハラスメント・いじめへの発展リスク
不倫関係の解消時や破綻後に、どちらか一方が相手に対してストーカー行為やパワハラ・セクハラに発展するケースがあります。被害者から会社に相談があった場合、企業は職場環境配慮義務(労働契約法第5条)違反を問われる可能性があり、法的責任を負うことになります。
3.情報漏洩・不正行為のリスク
特に、役職者と部下、他部署の機密情報を扱う社員同士の不倫は非常に危険です。
- 機密情報の交換: 不倫関係を維持する中で、業務上の機密情報を共有してしまう。
- 不正の黙認: 不倫関係にある社員の不正行為を、もう一方が見て見ぬふりをする、または隠蔽に加担する。
4.「使用者責任」を問われる法的リスク
不倫関係が原因で、当事者の配偶者や家族から訴訟を起こされた場合、企業も使用者責任(民法第715条)を問われるリスクがあります。
特に、会社の業務時間中や会社の施設内での不倫行為、または地位を利用した関係であったと認定された場合、会社が損害賠償を命じられる可能性が高まります。
5.企業の信用失墜(レピュテーションリスク)
不倫問題が社外に流出したり、係争問題になったりした場合、企業のイメージダウンは避けられません。特に、コンプライアンス意識の低い企業として見なされ、採用活動や取引先との関係にも悪影響が出ることもあります。
企業が「介入すべき」と判断すべき具体的な事案例

「プライベートな問題」と割り切れない、企業が積極的に介入し、適切な対応(社内調査や配置転換など)を行うべき事案は、以下の通りです。
事案例1:職場の秩序や風紀を乱している場合
- 人目の多い場所での親密な行動:社内の会議室や共有スペースで人目をはばからずに接触し、他の社員が不快に感じたり業務に集中できなかったりする場合。
- 不倫の事実を公言:周囲に不倫関係を自慢したり、他の社員を巻き込もうとしたりして、職場全体がゴシップの場になっている場合。
事案例2:業務に支障をきたしている場合
- 業務上の公平性が損なわれている:上司と部下の不倫で、部下が不当な昇進や優遇を受けていると他の社員が感じ、士気が低下している場合。
- 情報漏洩の懸念:同じプロジェクトチーム内や、機密情報を扱う部署間の不倫であり、情報セキュリティリスクが極めて高い場合。
- 長時間労働や業務放棄:不倫関係を維持するために、早退・遅刻が増えたり、業務時間中に私的な連絡を取り合ったりして、業務を適切に遂行していない場合。
事案例3:ハラスメントや暴力沙汰に発展している場合
- 地位を利用した関係:上司が部下に対し、立場を利用して肉体関係を強要した、または関係を維持しようとしている場合(セクハラ・パワハラ)。
- 破局後のトラブル:関係解消後に、職場内で口論になったり暴力を振るったり、誹謗中傷を行ったりしている場合。
- 配偶者からの会社へのクレーム:不倫相手の配偶者から、会社に対して具体的な被害や迷惑の訴えがあり、業務が妨害されている場合。
関連記事:パワハラ・セクハラで会社が負う責任とは?訴訟リスクを回避する調査と対応策
社内不倫に対する適切な「介入」と「対応ステップ」

企業が介入する場合、感情的にならず、客観的な事実と就業規則に基づいて冷静に対応する必要があります。
ステップ1:事実関係の確認と聞き取り調査
- 公平な調査: まず、当事者双方および関係者から、個別かつ秘密裏に事実関係の聞き取りを行います。感情論は排除し、「業務への影響」と「就業規則違反の有無」に焦点を当てます。
- 証拠の収集: 業務時間中の私用携帯の使用記録、社内メールの内容、目撃情報など、客観的な証拠を収集し、事実を裏付けます。(探偵事務所への調査依頼を検討する重要なフェーズです)
ステップ2:懲戒処分の検討と判断
社内不倫を理由に懲戒処分や「解雇」を行うには、厳格な条件があります。単に不倫をしているという事実だけでは、解雇は不当と見なされる可能性が高いためです。
懲戒処分が認められるケースは、主に以下のような場合です。
- 就業規則に明確な規定がある:不倫行為が会社の信用失墜や秩序を乱す行為として懲戒事由に明記されている。
- 企業秩序維持に重大な影響を与えている:上記「介入すべき事案例」のように、業務遂行や社内の風紀に明確な悪影響が出ていること。
- 地位の利用・業務上の不正を伴う:上司の地位を利用したり、不倫関係を隠蔽するために業務上の不正を行った場合。 など
軽度な場合は厳重注意や始末書の提出に留め、重大な場合は降格、出勤停止、懲戒解雇を検討します。
ステップ3:リスク回避のための措置
懲戒処分に至らない場合でも、業務への影響を最小限に抑えるための措置を講じます。
- 配置転換・異動:当事者同士の接触を断ち、職場環境を改善するために、客観的な業務上の必要性を理由として配置転換を行います。
- 接触禁止の命令:業務時間中の私的な接触や、業務外でも会社の信用を損なう行動を控えるよう、書面で命令を出します。
- 配偶者への対応:配偶者からの連絡やクレームが業務に支障をきたす場合、「会社としては業務上の問題として適切に対応している」という事実のみを冷静に伝え、個人の私的な係争に会社が介入しない姿勢を明確に保ちます。
法的リスクを避けるための「社内規定」整備の重要性
「社内不倫を放置」という選択肢をなくすためにも、企業は就業規則を整備し、リスクの芽を摘むことが重要です。
- 服務規律の明確化:就業規則の「服務規律」の項目に、「私生活上の非行であっても、会社の信用を著しく傷つける行為、または職場の風紀や秩序を乱す行為を行った場合は懲戒の対象とする」旨を明記します。
- ハラスメント防止規定の強化:セクハラ・パワハラ防止規定に、「地位の優位性を利用した私的な関係の強要」が懲戒の対象となることを明確に盛り込みます。
まとめ
社内不倫問題は、一旦こじれると企業の時間、費用、信用を大きく消耗させます。社内不倫 に対する対応の鉄則は、感情論を排し、客観的な事実に基づいて迅速に対応することです。
- 事実の確認:当事者が事実を否定したり、口裏を合わせたりする場合、社内調査には限界があります。
- 法的証拠の確保:懲戒解雇や損害賠償請求など、法的な措置を視野に入れる場合は、法廷で通用する確実な証拠が必要です。
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