「ストーカー被害に遭っているのに、警察に相談してもなかなか動いてくれない…」。
このようなお悩みを抱え、当記事にたどり着いた方もいらっしゃることでしょう。元刑事である私のもとにも、同様の切実な声が数多く寄せられています。
ストーカー被害は、被害者の心身を蝕み、日常生活を破壊する深刻な犯罪です。警察に相談したにもかかわらず、期待通りの対応が得られないことは、被害者にとってさらなる絶望と不安をもたらします。
では、なぜ警察はストーカー相談に対してすぐに動いてくれないことがあるのでしょうか?そして、どうすれば警察に真剣に動いてもらえるのでしょうか?
このコラムでは、元刑事としての経験と知識に基づき、その理由と具体的な対策を詳しく解説します。
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目次
元刑事が語る!警察が「動きにくい」と感じるストーカー相談の背景
警察は、全ての犯罪に対して公平かつ迅速に対応する義務があります。しかし、ストーカー事案においては、残念ながら「動きにくい」と感じてしまう状況があるのも事実です。その背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 犯罪と断定しにくい「グレーゾーン」の多さ
- 証拠収集の難しさ
- 「民事不介入」の原則との境界線
- 警察官の認識不足・経験不足
- 優先順位の問題とマンパワー不足
それぞれ詳しく解説します。
「犯罪」と断定しにくい「グレーゾーン」の多さ
ストーカー規制法が施行され、明確な罰則が設けられたとはいえ、ストーカー行為の初期段階は、往々にして「好意の延長」や「行き過ぎた愛情表現」と見なされがちです。
- 付きまとい行為
「たまたま同じ道を通っただけ」「偶然会っただけ」と主張されるケース。
- SNSでのメッセージ
「友達として連絡しているだけ」「心配してメッセージを送っただけ」と解釈されるケース。
- プレゼントや贈り物
「善意で渡しただけ」「お礼のつもりだった」と主張されるケース。
これらの行為は、一つ一つを見ると「ただの迷惑行為」に過ぎないように見え、直ちに逮捕や捜査に繋がりにくいのが実情です。警察が動くには、「犯罪性」を明確に立証できる証拠が求められます。
証拠収集の難しさ
ストーカー行為は、多くの場合人目のない場所や巧妙な手口で行われます。そのため、被害者が一人で証拠を収集することは極めて困難です。
- 決定的な証拠の不足
例えば、「LINEでしつこくメッセージが来る」だけでは、脅迫や業務妨害に繋がる内容でなければ、直ちに警察が介入しにくい場合があります。
- 被害者の精神的負担
被害者は精神的に疲弊しており、冷静に証拠を集めることができないケースも少なくありません。
- 加害者の反証
加害者が「そんなことはしていない」「誤解だ」と強く主張した場合、被害者の証言だけでは状況が覆ってしまうこともあります。
警察は「客観的な証拠」を重視します。被害者の訴えだけでは、警察官も動きにくいというのが現状です。
「民事不介入」の原則と境界線
警察は「民事不介入」の原則を持っています。これは、私人間の争い、特に金銭トラブルや男女間の感情的なもつれに対しては、原則として介入しないというものです。
ストーカー事案の中には、元恋人や配偶者、あるいは知人との関係が悪化した結果、ストーカー行為に発展するケースも少なくありません。
このような場合、警察は「当事者間の問題」と捉え、直ちに介入することをためらうことがあります。
しかし、ストーカー行為がエスカレートし、生命・身体に危険が及ぶ可能性がある場合は、もはや「民事」の範疇を超え、「刑事事件」として警察が介入すべき段階となります。
この境界線を警察官がどこで判断するか、という問題も存在します。
警察官の認識不足・経験不足
全ての警察官がストーカー事案に対して十分な知識や経験を持っているわけではありません。特に、経験の浅い若手警察官の中には、ストーカー規制法や関連する法律の解釈、そしてストーカー事案特有の危険性を十分に理解していない者も残念ながらいます。
相談を受けた警察官がストーカー事案の深刻さを認識できず、「気のせい」「考えすぎ」と軽くあしらってしまうケースも存在します。これは、被害者にとって担当に当たった警察が悪かったでは済まない非常事態です。
優先順位の問題とマンパワー不足
警察は、殺人や強盗といった凶悪犯罪、あるいは大規模なテロ対策など、多くの重大事件を抱えています。限られたマンパワーの中で、どの事件を優先的に扱うかという判断が常に求められます。
ストーカー事案ももちろん重要な事案ですが、まだ「具体的な被害が出ていない」「生命の危険が差し迫っていると判断されない」段階では、他のより緊急性の高い事件に優先順位が劣ってしまうことがあります。
警察に「動いてもらう」ための具体的な方法!元刑事が伝授する5つのポイント
警察が動きにくい背景を理解した上で、ではどのようにすれば警察に真剣に動いてもらえるのでしょうか?
元刑事としての経験から、具体的な対策を5つのポイントに絞ってご紹介します。
徹底した「証拠収集」が最重要!
警察が動くための最も強力な武器は、動かぬ証拠です。どんなに些細なことでも、ストーカー行為を証明できるものは全て記録・保存してください。
日時、場所、内容を詳細に記録
いつ(〇月〇日〇時〇分)、どこで(〇〇通り、自宅前、職場)、誰が(ストーカー)、何をしたか(待ち伏せ、つきまとい、大声を出す、無言電話、SNSメッセージ、郵便物を置いていくなど)を具体的に記録します。特に、回数や頻度も重要です。「毎日」「一日に何回も」といった状況を明確に伝えます。
デジタルデータはスクリーンショットや動画で保存
LINE、メール、SNSのメッセージは、削除される前に必ずスクリーンショットを撮り、できれば印刷もしておきましょう。着信履歴やメールの受信履歴も同様です。不審な電話がかかってきた場合は、可能な限り録音する。ドライブレコーダーや防犯カメラの映像も有効です。
物理的な証拠も保管
送られてきた手紙・プレゼント・嫌がらせの品などは気持ちが悪いなどの理由で捨ててしまいがちですが、捨てずに保管します。住居侵入された場合は、その痕跡(窓の鍵の破壊、足跡など)を写真に撮り、警察が来るまで現状を維持します。
目撃者がいれば証言を記録
友人、知人、同僚など、ストーカー行為を目撃した人がいれば、その証言を記録に残してもらいましょう。
【元刑事からのアドバイス】
「些細なこと」と思わず、全て記録に残すことが重要です。個々の行為は小さくても、積み重なることで「悪質性」や「反復性」が証明され、ストーカー規制法の適用要件を満たす可能性が高まります。
「生命・身体の危険性」を明確に伝える
ストーカー行為が単なる迷惑行為ではなく、「生命・身体への危険性」をはらんでいることを警察に強く訴えることが重要です。
具体的な恐怖体験を伝える
-
- 「〇〇という言葉を言われたので、身の危険を感じた」
- 「以前、〇〇というトラブルがあったので、何かされるのではないかと怖い」
- 「自宅の周辺をうろつく姿を見かけるようになり、いつ侵入されるか分からない恐怖がある」 など
精神的・身体的影響を伝える
- 「不眠が続き、仕事に行けない」
- 「食欲がなくなり、体重が減少した」
- 「パニック発作が起きるようになった」 など
医師の診断書があれば、さらに説得力が増します。
【元刑事からのアドバイス】
感情的に訴えるだけでなく、具体的なエピソードとそれに伴う自身の心身への影響を冷静に伝えることが、警察官に深刻さを理解してもらう鍵となります。
「相談」ではなく「被害届」や「告訴状」の提出を求める
警察に相談に行くと、「まずは相談として承ります」と言われることがあります。しかし、それでは単なる情報提供で終わり、本格的な捜査に繋がらないこともあります。
最初から「被害届」や「告訴状」の提出を強く求めましょう。
- 被害届: 犯罪被害に遭ったことを警察に知らせる書類。捜査のきっかけになる。
- 告訴状: 犯罪の加害者を処罰してほしいという意思表示を示す書類。受理されると、警察は捜査を開始し、検察官は起訴の可否を判断する。
【元刑事からのアドバイス】
警察署の窓口で「被害届を出したい」と明確に伝えましょう。もし渋られたり、応じてもらえなかったりする場合は、「なぜ受理できないのか」理由を明確に問い、それでも納得できない場合は、別の警察署や警察本部の相談窓口に連絡することも検討してください。
複数の窓口・担当者に相談する
一度相談して対応が思わしくなくても、諦めずに複数の窓口や担当者に相談してみましょう。
- 警察署の生活安全課: ストーカー事案は通常、生活安全課が担当します。
- 警察本部の相談窓口: 各都道府県警察には、人権侵害やDV、ストーカー事案に関する専門の相談窓口が設置されています。
- 匿名電話相談窓口: 各地の警察では匿名で相談できる窓口もあります。
【元刑事からのアドバイス】
警察官も人間であり、対応には個人差が出てしまう可能性も少なからずあります。一度の相談で諦めず、複数の警察官、部署に働きかけることで、適切な対応に繋がる可能性が高まります。
探偵事務所など専門機関の活用も視野に
「自分で証拠を集めるのは難しい」「警察にどう訴えれば良いか分からない」「身の安全が心配」という場合は、探偵事務所などの専門機関の活用も検討する価値があります。
私たちのような元刑事が運営する探偵事務所は、警察の捜査手法や考え方を熟知しています。
- プロによる証拠収集
尾行や張り込みなど、個人では困難な方法でストーカー行為の決定的な証拠を収集します。防犯カメラの設置や張り込み等の調査を駆使し、ストーカー犯の特定も可能にします。
- 警察への働きかけのサポート
収集した証拠を警察に提出する際のアドバイスや、警察官との連携を図ることも場合によっては可能です。
- 法的サポートの紹介
ストーカーの証拠があれば被害届や告訴の受理がスムーズになります。必要に応じて、法的な手続きをより効果的に進めるためにストーカー被害に詳しい弁護士を紹介いたします。
【元刑事からのアドバイス】
探偵は、警察が「動く」ために重要な「きっかけ」や「材料」を提供することができます。特に、初期段階で警察が動きにくいと感じるような事案でも、探偵が収集した確実な証拠があれば、警察も動かざるを得ない状況を作り出せることもあります。
ストーカー調査の費用については総合探偵事務所アルシュ船橋の記事も参考に→『探偵のストーカー調査はどれくらいの費用がかかる?調査で得られる成果とは』
まとめ
ストーカー被害は、被害者にとって計り知れない不安と苦痛を伴うものです。警察がすぐに動いてくれない状況は、さらに追い打ちをかけることでしょう。
しかし、諦める必要はありません。
今回ご紹介したように、「確実な証拠」 を集め、「生命・身体への危険性」 を明確に伝え、「警察の窓口を使い分ける」 など、適切な行動を取ることで、警察はきっと動いてくれます。
もし、ご自身での対応に限界を感じたり、精神的に追い詰められていたりするならば、元刑事が運営する総合探偵事務所アルシュにご相談ください。
あなたの安全と平穏な生活を取り戻すために、全力でサポートさせていただきます。