「まさか自社のオフィスに盗聴器が…」 多くの経営者様、総務・セキュリティ担当者様はそう思われるかもしれません。しかし、企業の機密情報を狙った「オフィス盗聴」は、決して映画やドラマの中だけの話ではないのです。
情報化社会の現代において、「情報」は企業にとって最も重要な資産の一つです。新製品の開発情報、顧客リスト、経営戦略、M&Aに関する内部情報…。これらがもし競合他社や悪意を持つ第三者に筒抜けになっていたら、どうなるでしょうか?
会社の信頼は失墜し、甚大な経済的損失を被ることは想像に難くありません。
本コラムでは、元刑事の視点から、会社に仕掛けられる盗聴器のリスクがいかに現実的であるか、そして、盗聴が違法となる法律的な側面、さらにはプロが見る「仕掛けられやすい場所」について徹底的に解説します。
あなたの会社の大切な資産と未来を守るため、この記事がセキュリティ体制を見直す一助となれば幸いです。
目次
あなたの会社は大丈夫?オフィスが盗聴器のターゲットになる理由

なぜ、オフィスが盗聴のターゲットとして狙われるのでしょうか。それは、オフィスが「価値ある情報の宝庫」だからにほかなりません。
私たちが対応してきた事例から見えてくる、オフィスに盗聴器が仕掛けられる主な動機は以下の通りです。
競合他社による産業スパイ
最も深刻なケースです。競合企業が、貴社の経営戦略、技術情報、入札情報、顧客データを不正に取得するために、調査会社や工作員を使って盗聴器を仕掛けることがあります。特に、業界内でのシェア争いが激しい場合や、大きなプロジェクトが動いている時期は狙われやすくなります。
社内トラブル・人間関係の確執
意外に多いのが、内部の人間による犯行です。
昇進・評価への不満
自分の評価を不当に下げられたと感じる社員が、上司や経営陣の発言を盗み録りし、不祥事のネタを探そうとするケース。
ハラスメントの証拠収集
パワハラやセクハラの証拠を押さえるため、という大義名分で、会議室や上司のデスクに録音型の盗聴器を仕掛けるケース。しかし、目的が正当(に思える)であっても、その「手段」が違法行為に抵触する可能性があります。
派閥争い
社内の権力闘争が背景にある場合、相手派閥の失脚を狙って盗聴が行われることもあります。
退職者・元従業員による報復
会社に対して強い恨みを持ったまま退職した元従業員が、報復目的で盗聴器を仕掛けるケースです。在職中にオフィスの構造やセキュリティ体制を熟知しているため、巧妙な手口で設置していく傾向があります。内部情報を外部にリークしたり、取引先に横流ししたりすることで、会社にダメージを与えようとします。
個人的な動機(ストーカーなど)
特定の従業員に対する恋愛感情のもつれや、一方的な好意、あるいは憎悪から、ストーカー行為の一環として盗聴器が使用されることもあります。この場合、狙われた従業員のデスク周りや、休憩室などがターゲットになりがちです。
このように、社内における盗聴器のリスクは、外部からの脅威だけでなく、内部にも潜んでいることを強く認識しなくてはなりません。
知っておくべき法律知識、盗聴が違法となる境界線

では、盗聴器を仕掛けたり、それによって情報を得たりする行為は、法的にどう判断されるのでしょうか。
「盗聴 違法」というキーワードで検索される方も多いですが、実は日本の法律には「盗聴罪」という名称の罪は存在しません。
「聞く」行為そのものを直接罰する法律はないのです。
しかし、だからといって盗聴が許されるわけでは決してありません。盗聴器を「仕掛ける」という行為は、そのプロセスにおいて様々な法律に抵触する可能性が極めて高いのです。
元刑事として、捜査の観点から違法となる主なケースを解説します。
建造物侵入罪(刑法第130条)
最も適用されやすい法律です。盗聴器を仕掛ける目的で、許可なく他人の管理するオフィス(建造物)や敷地に立ち入る行為は、それ自体が犯罪です。 たとえ元従業員であっても、退職後に無断で立ち入れば成立します。在職中の社員であっても、正当な業務目的なく、深夜などに盗聴器設置目的で侵入すれば、罪に問われる可能性があります。
器物損壊罪(刑法第261条)
盗聴器を設置するために、オフィスの壁に穴を開けたり、備品(デスク、電話機、什器など)を加工・破壊したりした場合に成立します。
電波法違反(電波法第109条)
日本国内で使用が許可されていない周波数帯や、基準を超える強さの電波を発する盗聴器(発信器)を設置・使用した場合、電波法違反に問われる可能性があります。市販されている安価な海外製盗聴器は、この違法な電波を使用しているケースも見受けられます。
有線電気通信法違反(第9条、第14条など)
オフィスの電話回線に盗聴器を直接接続し、有線の通信(通話)を傍受する行為は、この法律に抵触します。
不正アクセス禁止法
これは物理的な盗聴器とは少し異なりますが、ネットワークを通じてPCやサーバーに侵入し、データを盗み見る行為(デジタルな盗聴)も、もちろん違法です。
【民事上の責任】プライバシーの侵害
刑事罰とは別に、民事上でも大きな責任を問われます。盗聴によって個人のプライバシーや、企業の機密情報という「法的利益」を侵害した場合、不法行為として損害賠償請求の対象となります。
| ≪元刑事の視点≫刑事が捜査を行う際でさえ、通信傍受(いわゆる盗聴)は、特定の重大犯罪の捜査において、裁判所が発行する厳格な令状がなければ絶対に行えません。それほど、人の「通信の秘密」は重く守られています。一般人が、営利目的や個人的な恨みで他人の会話を盗み聞く行為がいかに違法性の高いものであるか、お分かりいただけるかと思います。 |
【元刑事が解説】オフィスで盗聴器が仕掛けられやすい場所

盗聴器は、設置する犯人の目的によって、仕掛ける場所が大きく異なります。
元刑事としての経験上、犯人心理を読み解くと、「最も効率よく、価値の高い情報が得られ、かつ発見されにくい場所」が狙われます。
オフィスにおける盗聴器の設置場所として、特に警戒すべき危険ゾーンを具体的に解説します。
レベル1:最も一般的で狙われやすい場所
電源タップ・コンセント周り
最も警戒すべき場所です。
- 理由
オフィスには無数の電源タップがあります。一つ増えていても気づかれにくい上、常に電力が供給されるため、電池切れの心配がなく半永久的に盗聴電波を発信し続けられます。コンセント内部に仕込むタイプや、OAタップそのものに偽装した「偽装型盗聴器」が主流です。
- チェックポイント
見慣れない電源タップがないか? 社名やロゴのない、安価なタップが不自然に置かれていないか?
会議室・役員室のテーブルの下
重要な意思決定が行われる場所の筆頭です。
- 理由
役員会議、経営戦略会議、M&Aの密談など、企業の最重要情報が集まるため。
- チェックポイント
テーブルの裏側、天板の隙間、配線カバーの中。粘着テープやマグネットで小型の録音機や発信器が貼り付けられているケースが多いです。
電話機・複合機
ビジネスの必須アイテムもターゲットになります。
- 理由
通話内容を直接傍受するため。特に役員室や経理部門の電話機は狙われやすいです。
- チェックポイント
電話機の内部、モジュラージャック(壁との接続部)、複合機の配線周り。
レベル2:巧妙に隠されやすい場所
備品・調度品に偽装
日常に溶け込んでいるため、発見が困難です。
- 理由
会議室や役員室に「あって当然」のものに偽装するため、警戒されにくいのが特徴です。
- チェックポイント
- 置き時計、掛け時計
- ボールペン、電卓(特に会議室常設のもの)
- 観葉植物の鉢植え(土の中や鉢の裏)
- 照明器具、プロジェクター
このようなものに最近新しく設置された備品はないか? 誰が持ってきたか不明なものはないか?
デスク周り・PC周辺
特定の個人を狙う場合や、日常業務を監視する場合に狙われます。
- 理由
PCのキーボードの打鍵音(パスワード推測)や、電話応対の内容を盗むため。
- チェックポイント
PCモニターの裏、キーボードの内部(USB接続部に偽装)、デスクの引き出しの奥。
給湯室・休憩室
機密情報とは少し異なりますが、人間関係のトラブルが動機の場合に狙われます。
- 理由
社員の「本音」や「噂話」が集まる場所。ハラスメントの証拠集めや、社内の人間関係を探る目的で設置されることがあります。
レベル3:プロの犯行が疑われる場所
天井裏・床下(OAフロア)
本格的な産業スパイや、内部事情に精通した者の犯行が疑われます。
- 理由
設置には工事が必要な場合もあり、素人には困難。しかし、一度設置すれば発見は極めて難しく、長期間の盗聴が可能です。配線に直接接続するタイプもあります。
- チェックポイント
天井の点検口やOAフロアのパネルに、不自然に開け閉めした形跡はないか?
社用車(特に役員車)
オフィス外での「移動する会議室」も危険です。
- 理由
車内での電話や同乗者との会話は、非常に機密性が高い内容であることが多いため。
- チェックポイント
座席の下、ダッシュボードの裏、トランク。GPS発信器とセットで仕掛けられることもあります。
まずはセルフチェック!盗聴器の存在を疑うべきサインと「限界」
もし「最近、情報漏洩の疑いがある…」と感じたら、プロに依頼する前に、まずは自社で確認できることから始めましょう。
盗聴器の存在を疑うべき「サイン」
情報漏洩の形跡
公開前の新製品情報や、会議でしか話していない内容を、なぜか競合他社が知っている。
不審な人物の出入り
最近、不審な業者が点検と称して出入りした。あるいは、退職した社員が無断で立ち入った形跡がある。
備品の変化
見慣れない電源タップ、時計、文房具などが置かれている。
通信のノイズ
特定の場所で、固定電話や携帯電話、ラジオに不審なノイズが入る。(ただし、最近のデジタル盗聴器ではノイズが出ないことも多い)
不審な電話
無言電話や、すぐに切れる不審な着信が増えた。(盗聴器の中には、外部から電話をかけることで作動(集音)を開始するタイプがあるため)
簡易的なセルフチェック方法
目視による確認
前述した「仕掛けられやすい場所」を重点的に、不自然なものがないか、丁寧にチェックしてください。特に電源タップ、テーブルの裏、備品は念入りに確認します。
市販の盗聴器発見器の使用
数千円から数万円で、電波を感知する簡易的な発見器が市販されています。FMラジオを使って特定の周波数に合わせる方法も知られています。
関連記事:盗聴器を探す方法については、アルシュ船橋ブログのコチラの記事でも紹介しています。
セルフチェックの「限界」を知る
ここで、元刑事として強調したいのは、セルフチェックには重大な限界があるということです。
発見器の性能不足
市販の安価な発見器は、特定の周波数帯(VHF/UHF帯)の電波式盗聴器にしか反応しないものがほとんどです。
見つけられない盗聴器の多様化
近年の盗聴器は非常に高度化しています。
録音型(ボイスレコーダー)
電波を発しないため、電波探知機では見つかりません。
デジタル式・スリープ型
暗号化された電波や、ごく短時間だけデータをバースト送信するタイプ、特定の時間帯や遠隔操作でしか作動しないタイプは、常時電波を監視していても検知が困難です。
スマホアプリ型
使われなくなった古いスマートフォンをオフィスに隠し、遠隔操作アプリで盗聴・録音する手口もあります。これはWi-Fiや携帯電波網を使うため、従来の盗聴電波とは異なり発見が難しいです。
証拠保全の失敗
万が一、不審な物を発見したとして、それを素手で触ったり、すぐに取り外したりしてはいけません。犯人の指紋などの重要な「証拠」を消してしまうことになります。
セルフチェックで「何も出なかった」からと安心してしまうことが、実は一番危険なのです。プロの目から見れば、最も巧妙な盗聴器を見逃しているだけに過ぎません。
盗聴器調査は「元刑事の探偵」へ。専門家を選ぶべき決定的理由
企業の情報漏洩対策として盗聴器調査を行う場合、私たちは「元刑事」が在籍する専門の探偵・調査会社に依頼することを強く推奨します。
その理由は、使用する「機材」と「ノウハウ」が全く異なるからです。
プロフェッショナル専用の調査機材
盗聴器の種類は多く、デジタル式やステルス式など様々です。我々はスペクトラムアナライザー(広帯域受信機)など市販の発見器とは比較にならない高精度・高機能な専用機材を複数組み合わせて調査を行うことで、市販の発見器では発見不可能な「録音型」や「スリープ型(特定の時間だけ作動する)」盗聴器も、徹底的に洗い出します。
元刑事ならではの「経験」と「着眼点」
機材はあくまで道具です。それを使いこなす人間の「目」が最も重要です。 私たちは、刑事時代に培った「現場観察力」と「犯人心理の洞察」に基づき調査を行います。 「もし自分が犯人なら、どこに仕掛けるか?」「このオフィスの構造なら、どこが死角になるか?」 この視点があるからこそ、素人や経験の浅い調査員が見逃すような、巧妙に隠された盗聴器を発見できるのです。
発見後の「証拠保全」と法的対応
万が一、盗聴器が発見された場合、私たちの「本領発揮」です。 単に撤去して終わりではありません。
- 証拠保全: 指紋やDNAを損なわないよう、法的に有効な形で盗聴器を押収します。
- 警察への届出サポート: 刑事事件として立件(建造物侵入、器物損壊など)できるよう、警察への被害届の提出を全面的にサポートします。元刑事として、警察がどのような証拠を必要とするかを熟知しています。
- 犯人特定の支援: 設置状況や機器の種類から、内部犯か外部犯かの推定、さらなる調査(素行調査など)による犯人特定の支援も可能です。
会社の「信頼」と「未来」を守るために、今すぐ行動を
企業における盗聴のリスクは、決して対岸の火事ではありません。一つの盗聴器が、貴社が長年かけて築き上げてきた「信頼」と「資産」を、一瞬にして奪い去る可能性があるのです。
情報漏洩は、起こってからでは手遅れです。
- 「最近、どうも情報の漏れが気になる…」
- 「役員交代や大きなプロジェクトを控えている」
- 「退職者とのトラブルがあった」
- 「オフィスのセキュリティ体制を一度、総点検したい」
もし、一つでも当てはまることがあれば、セルフチェックで安心せず、私たちのようなプロフェッショナルにご相談ください。
貴社のオフィスが「安全」であることを確認するだけでも、経営者様や従業員様の大きな「安心」に繋がります。
私たちは、貴社の大切な情報を守る「盾」として、万全の体制でお手伝いすることをお約束します。
まずは、貴社の状況を専門家にお聞かせください。ご相談・お見積りは無料です。情報が漏洩する「万が一」が起こる前に、今すぐご決断ください。


















