新たな取引を始める際、期待とともに抱くのが「この会社は本当に大丈夫だろうか?」という不安です。取引先の経営状態やコンプライアンスに問題があれば、自社が連鎖的に損害を被る、いわゆる「もらい事故」のリスクに直面します。
信用調査を探偵や専門機関に依頼するのは有効な手段ですが、費用も時間もかかります。実は、探偵に依頼する前に、インターネットや公開情報を使って、誰でもできる「セルフ信用調査」のステップがあるのをご存知でしょうか?
本記事では、プロの探偵が着目するポイントを応用し、あなたが「取引先の危険度」をわずかな時間とコストで、高い精度で見抜くための10項目のチェックリストを徹底解説します。
リスクを最小限に抑え、安全で実りある取引を実現するために、ぜひご活用ください。
目次
- 1 【準備編】セルフ調査の基本姿勢と情報源
- 2 探偵に依頼する前に!自分でできる取引先の危険度チェックリスト10項目
- 2.1 【経営基盤】役員構成・所在地変更の「頻度」は異常ではないか?
- 2.2 【経営基盤】担保設定・差押えの情報は公開されていないか?
- 2.3 【評判・信用】ネガティブな口コミ・訴訟情報が「特定の時期」に集中していないか?
- 2.4 【評判・信用】採用情報と公式サイトの情報が「矛盾」していないか?
- 2.5 【評判・信用】「代表者の名前」で検索して不適切な情報が出てこないか?
- 2.6 【実態】公式サイト・SNSの「更新頻度と内容」は適切か?
- 2.7 【実態】法人番号検索で「所在地と事業内容」が整合的か?
- 2.8 【経営基盤】業界平均と比較して「資本金」が異常に少ない、または多いのではないか?
- 2.9 【実態】取引先の「担当者」の言動に一貫性はあるか?
- 3 探偵に依頼する「ボーダーライン」の見極め方
- 4 まとめ
【準備編】セルフ調査の基本姿勢と情報源
セルフ信用調査の最大の武器は、「公開情報」と「論理的な疑いの目」です。
必ずチェックすべき情報源
情報源 | 調査対象 | 備考 |
---|---|---|
インターネット検索 | ニュース、評判、SNS、採用情報 | 鮮度の高い「生の声」とネガティブ情報を探す |
登記情報 | 役員変更、本店移転、担保設定 | 会社の「公式な履歴」を確認する |
会社四季報・業界地図 | 業績推移、資本構成、業界内での位置づけ | 客観的なデータを把握する |
IR情報・プレスリリース | 事業展開、財務状況(上場企業の場合) | 経営の透明性を測る |
危険シグナルは「矛盾」と「頻度」
一見問題なさそうな情報でも、「情報間の矛盾」や「ネガティブ情報の頻度・連続性」が危険シグナルです。公式サイトの主張と、SNSでの評判が大きく乖離していないか、過去数年間に問題が集中していないか、という視点で情報を見てください。
探偵に依頼する前に!自分でできる取引先の危険度チェックリスト10項目
ここからが本題です。10個のチェック項目は、「経営基盤」「評判・信用」「実態」の3つの側面から構成されています。
【経営基盤】役員構成・所在地変更の「頻度」は異常ではないか?
会社の登記事項証明書(法務局で取得可能)を確認し、以下の点をチェックします。
※登記事項証明書取得はオンラインでも可能。
- 代表者や役員の変更が頻繁(特に短期間に複数回)に起こっていないか。→ 内部対立や経営の不安定さのサイン。
- 本店の所在地移転が頻繁に繰り返されていないか。→ 計画性の欠如、あるいは「夜逃げ」を前提とした経営の可能性。
- 役員に反社会的勢力との関係が疑われる氏名がないか(検索エンジンや過去の報道でチェック)。
【経営基盤】担保設定・差押えの情報は公開されていないか?
登記事項証明書の「乙区」(おつ・く)には、その会社が所有する不動産に対する担保権設定(抵当権など)が記載されます。
- 過剰な担保設定がないか。→ 資金繰りが厳しく、借り入れに依存している可能性。
- 差押えの記載がないか。→ 税金滞納や債務不履行を起こしている深刻な危険シグナル。
- 登記簿を調べても自社不動産が確認できない(賃貸のみ、あるいは資産がない)という場合も要注意です。
【評判・信用】ネガティブな口コミ・訴訟情報が「特定の時期」に集中していないか?
インターネットで「会社名+詐欺」「会社名+訴訟」「会社名+未払い」といったキーワードで検索します。
- 元従業員による具体的な告発や、顧客からの苦情が多数見つかるか。
- それらの情報が短期間に集中しているか。→ 会社のコンプライアンスや経営方針が急変した証拠。
- 過去にメディアで報じられたトラブル記事が消されずに残っているか。
【評判・信用】採用情報と公式サイトの情報が「矛盾」していないか?
採用情報(求人サイトなど)は、会社の「実態」を探るための重要な手がかりです。
- 異常な高待遇(業界平均を遥かに超える給与やボーナス)を謳っていないか。→ 集めた資金を短期で持ち逃げする「自転車操業型詐欺」の常套手段。
- 常に同じ職種(特に営業職)の求人が出続けているか。→ 社員の定着率が極端に低い(ブラック企業体質)可能性。年間の離職率が30%を超える場合は要注意。
- 公式サイトの事業内容と、求人広告で募集している職種に大きな乖離がないか。
【評判・信用】「代表者の名前」で検索して不適切な情報が出てこないか?
代表取締役の氏名は、会社の「顔」であり、経営姿勢そのものです。
- 代表者の氏名で検索し、派手な自己啓発系のイベント登壇や、過度な自己宣伝が見られないか。
- 過去に別の会社を倒産させた経歴や、金融トラブルに関する情報が出てこないか。
- SNSでの発言が、社会規範から大きく逸脱していないか(コンプライアンス意識の低さ)。
【実態】公式サイト・SNSの「更新頻度と内容」は適切か?
公式サイトやSNSは、会社の「活動実態」と「情報発信能力」を示します。
- ニュースリリースやブログの更新が数年間停止していないか。→ 事業活動が停滞している可能性。
- 商品やサービスが抽象的で、具体的な導入事例や実績が一切公開されていないか。→ 「ペーパーカンパニー」や「実態のない事業」の可能性。
【実態】法人番号検索で「所在地と事業内容」が整合的か?
国税庁の法人番号公表サイトで所在地を調べ、Googleストリートビューで確認します。
- 記載されている所在地が「バーチャルオフィス」「レンタルオフィス」「マンションの一室」ではないか。これ自体は問題ありませんが、事業内容の規模と所在地が明らかに不釣り合いな場合は要注意。
- 所在地に、他の多数の会社が登記されていないか(→ペーパーカンパニーの温床)。
- 工場や倉庫が必要な事業にも関わらず、オフィスビルの一室に登記されていないか。
【経営基盤】業界平均と比較して「資本金」が異常に少ない、または多いのではないか?
資本金は、会社の設立時に出資された資金であり、会社の体力や信頼度を測る初期指標です。
- 請負金額が大きい事業や、設備投資が必要な事業にも関わらず、資本金が極端に少ない(例:100万円未満)。
- 逆に、設立直後に数十億円といった異常に大きな資本金を設定しているにも関わらず、事業内容が不明瞭な場合。→ 信用を誇示するための「見せ金」の可能性。
【実態】取引先の「担当者」の言動に一貫性はあるか?
これは公開情報ではなく、商談時の「体感チェック」です。
- 説明内容が曖昧で、専門用語を多用してごまかそうとしていないか。
- 具体的なデータや数字の提示を避ける傾向がないか。
- 「今すぐ」「特別に」「最後のチャンス」など、契約を急かす発言が目立たないか。→ 冷静な判断をさせないためのテクニック。【実態】「取引先」の開示を過度に拒否していないか?
信頼できる取引先は、その実績を誇りとして開示します。
- 「守秘義務」を盾に、既存の取引先や提携企業の情報を一切開示しようとしない。
- 「大手企業との取引がある」と口頭では言うが、それを証明する資料や情報を出さない。→ 信用力を偽装している可能性。
探偵に依頼する「ボーダーライン」の見極め方
上記の10項目中、3つ以上のチェック項目に該当する場合は危険(イエローカード)です。セルフ調査の限界を超えている可能性が高いため、探偵による信用調査の検討をおすすめします。
特に「役員構成の頻繁な変更(項目1)」や「登記簿の差押え記載(項目2)」、「元従業員による具体的な告発が多数(項目3)」といった「法的・深刻なリスク」に関する項目でチェックがついた場合は、迷わず専門的な信用調査を探偵事務所や調査会社に依頼することを強く推奨します。
探偵は、公開情報だけでは見えない「人づての情報(ヒアリング)」や「現地での活動状況の確認」といった非公開情報を合法的に収集し、あなたの不安を明確なレポートに変えてくれます。
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まとめ
本チェックリストは、取引先選定における「防弾チョッキ」のようなものです。全てをクリアしたからといって100%安全とは言い切れませんが、リスクの高い地雷を踏む確率は劇的に減らせます。
取引先の「信用」は、会社の未来を守るための「最大の資産」です。この10項目のチェックを習慣化し、安全で確実なビジネスを展開していきましょう。
もし、自己調査では判断がつかない、あるいは明確な証拠が必要だと感じた場合は、その時こそプロの探偵に相談するタイミングです。元刑事の経験を生かした圧倒的な調査力の信用調査なら総合探偵事務所アルシュにご相談ください。